マスクがこどもの発達に与える影響を考える➀

執筆者:麦谷綾子( 教員ページへ
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感染状況が長引くなか、マスクをつけた生活が当たり前になってきています。マスクをすると、話している相手の口元が見えなくなりますし、声も少しくぐもります。このことは言語獲得中のこども、特に保育園のように長時間大人がマスクをつけている環境で過ごす幼いこどものことばの発達にどのような影響を与えるのでしょうか?最近、シンガポールの研究者らによるこんなタイトルの研究論文が発表されました。

Infants recognize words spoken through opaque masks but not through clear masks. (赤ちゃんは不透明なマスクをつけて話された単語は認識するが、透明なマスクでは認識しない)

この研究では、2歳児を対象に、➀なにもつけていない話者、②不透明な不織布マスクをつけた話者、③透明なフェイスシールドをつけた話者の発したことば(例:スプーンを見て!)を2歳児が聞き取って、ちゃんとことばの指し示す対象(例:スプーンの絵)を見るかどうかを実験しています。結果として、➀の場合はもちろん、②のように口元の見えない不透明の不織布マスクでも、こどもはちゃんとことばを聞き取り、そのことばが指し示す対象を見ることができました。ところが③の透明フェイスシールドの条件では、ことばを聞き取って対象を見るという行動が起きなかったのです。

不織布マスクよりも口元が良く見えて声もくぐもりにくいはずの透明フェイスシールドのほうが、ことばがうまく聞き取れなかったという結果は、かなり予想外ですね。実際、この実験に参加したこどもたちの中には、絵本読みなどの言語活動では保育者があえて透明フェイスシールドに付け替える取り組みを行っている保育園に通っているこどもたちもいました。(②につづく