インタビュー研究の魅力

執筆者:小川 洋子( 教員ページへ
image-cf61526c.jpg

みなさん、インタビューをしたことはありますか?小学生の頃に商店街の人にお仕事インタビューをした、高校生の頃に行きたい大学ややってみたい仕事のOB/OGにインタビューをした、といった経験がある方もいらっしゃるかと思います。新聞部にいたのでインタビューはお手のものという方もいらっしゃるかもしれませんね。

心理学の研究法の中にもインタビューをして研究をしていく方法があります。心理学研究で用いられる手法としては、調査法、観察法、実験法などがありますが、インタビュー研究は調査法の1つであり、面接法とも言います。心理学研究には、①問いを立てる、②データを収集する、③データを分析する、④研究結果をまとめる、という4つの要素がそのプロセスに含まれており(村井,2012)、インタビュー研究もこの流れで進められていくことが多いです。

たとえば、あなたの友人で、何か大きな問題にぶち当たって悩んでいる人がいたとします。半年後にその友人にまた話を聞いた時、友人がその問題を乗り越えていたとします。半年前にあんなに悩んでいたのに、その友人は今明るく過ごしている。「その問題をどうやって乗り越えたのか?」とあなたが気になったとします。これが、①問いを立てるの「問い」につながります。気になったあなたは、その問いを明らかにするため、②データを収集することにしました。悩んでいた頃からその問題を乗り越えるまでに一体どのようなことを経験したのか、その友人にインタビューをするのです。どういった質問をすると自分が立てた「問い」を明らかにできそうか、項目を考えます。考えた項目の一覧はインタビューガイドと呼ばれます。他にも同じように大きな問題を乗り越えた経験がある人がいないか探し、その人にもインタビューをしてみるといいかもしれません。そのようにして、集めたインタビューの内容を文字に起こし、①の「問い」を明らかにするための③分析を行います。そしてその分析結果を④研究結果にまとめるのです。

インタビュー研究の魅力の1つは、自分では考えもつかなかった内容が明らかになることにあると思います。先ほどの例でいうと、「直面していた大きな問題をどうやって乗り越えたのか?」という「問い」を明らかにするために行ったインタビューの中で、研究者が自分なりに「誰か助けてくれる人がいたのかもしれない」「問題自体が次第に小さくなっていったのかもしれない」といった予想を持ちながらお話を伺っていても、研究者が思いもしなかったことがその問題を乗り越えるターニングポイントになっていることがあります。また、1つのことだけでなく、複合的な条件が合わさってその人が問題を乗り越えるきっかけになっていることもあります。こういった自分では考えもつかなかった内容を伺うと、「そういった捉え方(考え方)もあるのか」と自分の思考の中に新しい窓が増えるような感覚になります。このような経験ができることがインタビュー研究の魅力の1つだと考えています。

心理学研究と聞くと、よく「量的研究」と「質的研究」という言葉を耳にすると思いますが、量的研究で分析するデータは数値的なもの、質的研究で分析するデータは非数値的なもの(たとえば文字など)、と分けることができます。上記のように、インタビュー内容を文字に起こしたものをデータとする研究は、質的研究になります。質的研究は、目的を決めて手段を選ぶ「山登り」より、いろいろな生きものが縦横に交差する原野に「冒険」に出かける研究にたとえられます(やまだ,2007)。インタビューをする中で、その方が経験してきたことを伺い、自分の思考の中に新しい窓が増えると、大事な教訓をいただいたような気持ちになります。

村井潤一郎編著(2012),心理学研究法,サイエンス社.

やまだようこ編(2007),質的心理学の方法――語りをきく――,新曜社.