「リフレーミング」:視点を変えてみてみよう②

執筆者:青木みのり( 教員ページへ
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私もこんな経験をしました。毎年あるセミナーの講師を担当しているのですが、今までは対面で行うことが前提でしたので、受講者は東京近辺の方がほとんどでした。しかしコロナ禍のおり、いったんは休止したものの、オンラインで再開したところ、日本各地の方々とつながることができたのです。これはとても貴重な出会いの経験でした。コロナ禍は人間同士のコミュニケーションを断ち切るものとばかりとらえていましたが、見方を変えて工夫することで、違うつながりが生まれてきたのでした。

また、授業で「自分の欠点をリフレーミングする」ことをやってみると、「就活でうまくいかなくて落ち込んでいたけれど、気が楽になった」「自分にもよいところがあると思えた」などの感想が聞かれ、私もうれしくなることがあります。

一方で「こそばゆい」「自分を甘やかしている気がする」という感想も聞かれます。私たちは普段、自分を認めることに慣れていないのかもしれません。また「楽観的になりすぎると、問題を見逃したり蓋をしてしまうことになるのではないか」と心配になるのかもしれません。慎重で謙虚な姿勢は大変すばらしいと思います。でも、ポジティブな面を見つけ出すことは、ネガティブな面を否定してしまうことではないのです。むしろ、問題や困難をしっかりと見据えながら、同時にポジティブな面、自分や周りの人の長所を見落とさないことが、私たちに力を与えてくれると感じています。相談にいらした方は、今まで問題に向き合い続けてきたがゆえに疲れて力を失っていることが多いので、リフレーミングによって、その力を少し取り戻すことができたら、と思うのです。何か困ったことがあると、そのことに目を奪われて私たちはポジティブなことを見逃してしまいがちです。そんな時こそ、リフレーミングが役に立つのだと思います。

また、リフレーミングはネガティブなことをポジティブにとらえるということだけではありません。枠組みを変える、という考えはさまざまに応用可能です。例えば「自分の体験から離れて、相手の視点に立ってみる」とか、「身の回りのことから離れて大きな視点を持ってみる」、逆に、「いつも他の人や周囲のことが気になってしまうけれど、『自分はどう感じているのだろう?』と自問してみる」そういったことはすべて、「枠組みを変えて眺める」ことにつながり、行き詰まりを打開する助けになってくれるかもしれません。

平木典子 (2003) カウンセリング・スキルを学ぶー個人心理療法と家族療法の統合.金剛出版.