「ひきこもり」について知っていますか?

執筆者:堀江桂吾
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「ひきこもり」の定義

2020年末に,テレビで「ひきこもり」をテーマにしたドラマが放映されましたが,ご覧になった方はいるでしょうか?おそらく,ドラマを見なかった人でも,「ひきこもり」という言葉を聞いたことはあるでしょう。しかし,いったいどのような状態を指すのか,あるいは,日本において何人くらいの人が「ひきこもり」状態にあるのかを知っている人はどれだけいるでしょうか。

「ひきこもり」はあくまで状態なので,その定義は難しいのですが,例えば内閣府は,社会的自立という観点からひきこもりをとらえています。そして「自室からほとんど出ない」「自室からは出るが,家からは出ない」「近所のコンビニなどには出かける」に当てはまる人を「狭義の引きこもり」,「趣味の用事のときだけ外出する」人を「準ひきこもり」と定義しました。そして,これらの人々すべてを含んだものを「広義のひきこもり」と名付けました。

さて,内閣府が平成28年度に示した「若者の生活に関する調査報告書」において,「広義のひきこもり群」は54万1千人と推計されました。なお,男女比については,「男性」63.3%,「女性」36.7%と報告されています。男性の方が多いですね。

 

「ひきこもり」の長期化

では,「ひきこもり」に関連した「8050問題」という言葉を聞いたことはありますか?この言葉は,ひきこもりが長期化し,当事者が50代を迎え,その親が80代に至っているケースのことを指しています。上述の調査では40歳以上の「ひきこもり」の実態が捉えられていない,という批判を受け,内閣府は,平成30年度に満40歳から満64歳までの人々を対象とする実態調査を行いました。その結果,「広義のひきこもり群」は61万3千人と推計されました。「男性」が76.6%,「女性」が23.4%で,上述の調査より男女比の偏りが大きいことがわかりますね。

平成28年度の調査結果と合わせると,単純計算で約115万人が「広義のひきこもり」状態にあると推測されます。日本の人口が約1億2千万人ですから,1%ちかく,つまり100人に一人くらいの人たちが「広義のひきこもり」状態にあるわけです。皆さんの周囲にいても不思議ではありません。これだけたくさんの人が社会参加できない状態にあるということを,どのように考えたらよいのでしょうか?

 

「ひきこもり」を規定するもの

上述した調査によると,40代以上の「広義のひきこもり」状態にある人々のうち,10年以上ひきこもり状態にある人々が30%を超えています。なかには20年以上ひきこもり状態にある人々もいます。このことは,一度ひきこもりの状態になると,3人に一人は長期化する可能性がある,ということを示唆しています。加えて,「ひきこもり」が必ずしも「現代の青年」の問題とは言い切れない,ということにも注意する必要があるでしょう。

また,これだけ明確に示された男女差についてどう理解したらいいのでしょう?心理学の研究においては,結果に性差が認められることは少なからずあります。ただし,性差があるといっても,必ずしも生物学的な要因に由来するとは限りません。社会・文化的な要因からの影響もあるでしょう。どちらか,というよりは,どちらも考慮に入れる必要があると言えます。

心理学の研究に目を向けてみると,例えば渡部・松井・高塚(2010)は,ひきこもり状態にある人は,そうでない人と比べて,家族との情緒的絆が乏しいことや,対人恐怖的な心性が高いことを明らかにしています。しかし,これらが原因で「ひきこもり」状態に至ったかどうかはわかりません。「ひきこもり」状態を呈した結果,家族との絆が乏しくなったり,他者が怖いという気持ちが高まったりしている可能性もあります。

このコラムを読んで興味を持ったひとは,ぜひさまざまな調査結果,研究結果に目を向けてみて下さい。それが卒業研究につながるかもしれません。

(参考文献)

内閣府(2016)若者の生活に関する調査報告書

https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/hikikomori/h27/pdf-index.html (2021年2月16日取得)

内閣府(2019)令和元年版 子供・若者白書(全体版)特集2 長期化するひきこもりの実態

https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/r01honpen/s0_2.html (2021年2月16日取得)

渡部 麻美, 松井 豊, 高塚 雄介(2010) ひきこもりおよびひきこもり親和性を規定する要因の検討,心理学研究,81 巻 5 号 p. 478-484.