チンパンジーは、昔の仲間を懐かしむ?
夏と冬にチンパンジーに会いに行くことが、私のライフワークになっています。愛知県犬山市にある京都大学ヒト行動進化研究所で、チンパンジーを対象とした研究に携わって、今年で26年目になります。
チンパンジーたちは、それぞれのやり方で私を出迎えてくれます。ガハガハと大声を上げながら近寄ってきたり、遊びに誘ってきたり、舌をぺろりと出したり、じっと見つめたり。かつてと変わらない仕草で、私と挨拶を交わします。半年ぶりの再会でも、私のことを覚えているのがわかります。
では、チンパンジーは、何年も会っていない仲間に対して、どのような反応を示すのでしょうか。私の研究室の大学院生、大出愛子さんは、アイトラッカー(視線を計測する装置)を使って、この問いを実験的に検証しました(Ode, Adachi, & Imura, 2026)。
実験では、現在一緒に暮らしている、あるいは、かつて一緒に暮らしていたチンパンジーの顔写真と、一度も会ったことのないチンパンジーの顔写真を画面上に左右に並べて提示し、それぞれを見ている時間を比べました。
すると、チンパンジーは、かつて一緒に暮らしていた仲間の顔を、見知らぬチンパンジーの顔よりも長く見ました。最大約20年も会っていなかったにもかかわらず、かつての仲間の顔に、見知らぬチンパンジーの顔とは異なる反応を示したのです。
一方、現在も一緒に暮らしている仲間の顔と、見知らぬチンパンジーの顔とでは、見る時間に違いはありませんでした。単に知っている顔だから長く見るのではなく、長い間会っていなかったことが、顔への関心を高めたのかもしれません。チンパンジーも、昔の仲間の顔を見て「懐かしい」と感じるのでしょうか。その答えは、まだ誰もわかりません。
出会いもあれば、別れもあります。この研究にも参加したアイというチンパンジーは、2026年1月9日、49歳でこの世を去りました。しかし、アイとの思い出は、私たちだけでなく、ともに暮らしていたチンパンジーたちの記憶の中にも、残り続けることでしょう。
- Ode, A., Adachi, I., & Imura, T. (2026). Visual preference for previously familiar faces in Chimpanzees (Pan troglodytes). Scientific Reports, 16(1), 8646.
- チンパンジー、アイのメモリアルブログ:Chimpanzee Ai Memorial Blog. https://memorialai.webnode.jp/
