「みんな」と友達にはなれない理由 ② ー時間と同盟仮説ー

執筆者:石黒格
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 前回、親密な関係を持てる人の数は15人程度だという話を書きました。その理由として、認知能力の限界という説を紹介したのですが、私たちが数多くの人と親しくなることを妨げる要因は、他にもあります。今回は、時間の分配について紹介しましょう。

 「ローマは1日にして成らず」と言われますが、人間関係も同じです。誰かと親しくなっていくには会話をしたり、一緒に遊んだりといった相互作用の繰り返しが必要で、それには時間がかかります。親しくなった後、その関係を維持していくためにも、同じように一緒にいる時間が必要です。

 さて、時間は有限です。体も一つしかありません。誰かと一緒にいることを選べば、別の人とは一緒にいられないことも起きます。共通の友人ならば、みんなで一緒に、という会い方もありえますが、会話をするだけでさえ、4人同時が限界と言われています。必然的に、私たちが時間をかけて親しくなっていける人の数には限界が出てきます。

 時間的な問題に拍車をかけるのが、私たちが親密さを誰に対して感じやすいのか、です。社交に使える時間を、クラスの全員に等しく分配する人は、なんと呼ばれるでしょう。「みんなに平等に接する素敵な人」でしょうか? そういうこともたまにはあるでしょう。もっと可能性が高いのは「八方美人」。そうです。私たちは時間を誰もに平等に配分する人を好みません。私たちが好むのは、他の誰でもない、私たち自身を優遇する人なのです。

 では、誰かと親しくなり、親しい関係を維持するためには、どうするのが有効でしょうか。言うまでもなく、親しくしたい相手に時間を集中的に分配するのです。特定の相手を優遇することで、その相手に親密さを感じてもらうことができるでしょう。しかし、時間は有限だという事実を思い出してください。誰かに集中的に時間を分配すれば、別の人たちに分配する時間はなくなってしまいます。その事実は、周りの人から見られていますから、時間を分配してもらえないと判断した人は、(あなたがよほど魅力的でない限りは)離れていきます。必然的に、私たちは少数の人としか親密な関係を結ぶのが難しいということになります。

 さらに、人間関係には常に友好的な関係と敵対的な関係があります。誰かの敵と友好的な関係を築けば、その「誰か」とは敵対的にならざるをえません。敵に貴重な時間を分配する人を、味方だと信じられる人は、ほとんどいないはずです。すべての人と友好的な関係を築けている人はいませんから、私たちは誰と親しくなっても、潜在的な敵を作ることになります。親しい人を作るたびに、親しくなれたかもしれない人を失っていくのです。このこともまた、私たちが持てる親密な関係の数を制約していきます。

 私たちは、物理的にも社会的にも、親密な関係を数多く持つことができません。寂しい結論のようですが、この事実を自覚しているほうが、友人が少ないことをやたらと気にするよりは、ずっと気楽に生きられるのではないでしょうか。

参考文献

R.ダンバー 「人類進化の謎を解き明かす」 インターシフト

DeScioli, P., & Kurzban, R. (2009). The alliance hypothesis for human friendship. Plos One, 4(6).