色彩知覚と色名の習得①-色の弁別と識別

執筆者:鳥居登志子(元心理学科教員・日本女子大学名誉教授)
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ひとが知覚できる光の波長範囲は約380~780nm、実用的にはおよそ400~700nmです(下図)が、最も感度の高い帯域では、僅か2nm前後離れた2つの波長光を色の差として感じるとされています。通常は、150種余りの色相弁別と、それら色相の明度および彩度も区別できますので、膨大な色を区別する可能性をヒトは持ち合わせていることになります。

電磁波スペクトルとヒトの可視光スペクトル

では、色彩表現のために150種におよぶ色名が実際に用いられているでしょうか?そのようなことはありません。なぜならば、連続する波長の帯(スペクトル)はいくつかの不連続領域(色域)に分節して、各色域内の色は同じ色名で表現されるので、その数はごく限られてくるからです。各色域に対する色名による意味づけと、色域の分節は表裏一体の関係にあり、共に、色の概念を抽象して表象する際の基本態度に基づいて行われています。

それでは、色名は全く恣意的に与えられているのでしょうか?次のコラムで、基本的な色名が一定の規則性に従って増加することを示した文化人類学者による調査研究(Berlin & Kay,1969)を紹介しましょう。

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