石井ゼミ(社会心理学)の中級演習について紹介します!
こんにちは、石井ゼミ(社会心理学)の中級演習について紹介します。
前期の石井ゼミでは、研究論文の輪読を行いました。
具体的には、まず社会心理学を取り巻く再現可能性の問題に関する論文(藤島・樋口, 2016; 池田・平石, 2016)を読みました。
再現可能性とは、論文等で報告されている研究を別の人が同じ手続きで実施したときに、元の研究と同様の結果が得られることを指しますが、近年、心理学研究の再現性が低いことが指摘されて、問題視されているそうです。なぜ心理学研究の再現可能性が低いのか、その問題構造や対応策について勉強しました。
次に、英語の論文の精読に挑戦しました。論文読みはただでさえ難しいのですが、それを英語で読み解くというのはかなり根気がいります。でも、先生に一文ずつ解説してもらいながら、またゼミのみんなと協力しながら、少しづつ頑張っています。
先日読んだ英語論文は、清浄プライミング効果についての論文でした(Schnall et al., 2008)。プライミングとは、ある単語や図などに事前に参加者を曝露しておくと、その後の反応が変化するという現象のことです。そして清浄プライミング効果とは、手を洗うなどの「きれいさ」をプライミングすると、その後の道徳判断がより厳しくなる事を言います。実は、この清浄プライミングは先ほど述べた再現可能性が疑問視されているのですが、それが一体どんな方法で行われて、どんな結果になったのかをみんなで確認しました。
その他にも、他者が何を考えるか、何を感じるかという気持ちを推測する時に、まず「自分自身だっらこう...」と考えてから、それを相手に当てはめているという英語論文も読みました(Todd et al., 2016)。この研究では、そうした自分を使った推測をする程度が「他者の立場になって考えてみよう」という努力によって変わってくるという話でした。論文の方法や結果部分を読んでいるとたくさんの質問が出てくるので混乱しそうでしたが、先生が「データ構造を想像しましょう」といってホワイトボードに表や図を描いてくれて、「ああ、そことそこの関連を分析したのか」とよりわかりやすくなりました。また論文の内容も、友人や知り合いの気持ちを考えるという場面は日常にも多くあるので、自分が何を考えているかと思わず振り返ってしまいました。
さて、後期の石井ゼミでは、前期によんだ研究論文の追試を行うことになっています。自分たちで研究を準備して実施するのは初めての体験ですが、論文を読んで得た知識を活かして頑張りたいと思います。
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池田巧毅・平石 界 (2016). 心理学における再現可能性危機:問題の構造と解決策. 心理学評論, 59(1), 3–14. https://doi.org/10.24602/sjpr.59.1_3
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藤島喜嗣・樋口匡貴. (2016). 社会心理学における“p-hacking”の実践例. 心理学評論, 59(1), 84–97. https://doi.org/10.24602/sjpr.59.1_84
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Schnall, S., Benton, J., & Harvey, S. (2008). With a clean conscience: Cleanliness reduces the severity of moral judgments. Psychological Science, 19(12), 1219–1222. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2008.02227.x
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Todd, A. R., Simpson, A. J., & Tamir, D. I. (2016). Active perspective taking induces flexible use of self-knowledge during social inference. Journal of Experimental Psychology: General, 145(12), 1583–1588. https://doi.org/10.1037/xge0000237