📚論文紹介:社会科学の研究結果はどれくらい信頼できるのでしょうか?
石井先生が参加したプロジェクトの論文が『Nature』誌に掲載!
”社会科学の研究結果はどれくらい信頼できるのでしょうか?”
この重要な問いに対して、大規模な国際プロジェクト(SCOREプロジェクト:https://www.cos.io/score)が実施されました。このプロジェクトでは2009〜2018年に出版された社会科学領域(心理学、経済学、政治学など)の学術論文の知見について、再生可能性(reproducibility)、分析的頑健性(robustness)、そして再現可能性(replicability)の3つの側面から検証を行い、その成果が『Nature』誌から出版されました。
- 再生可能性:Miske, O., Abatayo, A.L., Daley, M. et al. (2026). Investigating the reproducibility of the social and behavioural sciences. Nature, 652, 126–134. https://doi.org/10.1038/s41586-026-10203-5
- 分析的頑健性:Aczel, B., Szaszi, B., Clelland, H. T. et al. (2026). Investigating the analytical robustness of the social and behavioural sciences. Nature, 652, 135–142. https://doi.org/10.1038/s41586-025-09844-9
- 再現可能性:Tyner, A. H., Abatayo, A.L., Daley, M. et al. (2026). Investigating the replicability of the social and behavioural sciences. Nature, 652, 143–150. https://doi.org/10.1038/s41586-025-10078-y
石井准教授はこのうちの「分析的頑健性」の検証に参加しました。
日経新聞の記事にも
またこの成果を取り上げた日経新聞の記事(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOSG303J30Q6A330C2000000/)に、
石井准教授のコメントが掲載されました。
さて、再生可能性とは、先行研究と同じデータ・同じ分析を用いて、同じ結果が得られるかを指す概念です。再生可能性を検証した第一論文では、社会科学領域の論文のうち、データが入手可能であった約180の論文について、およそ半数の知見は再生可能性があることを示しました。完全とは言えないまでも、概ね再生可能性があると判断された論文まで含めれば、その数は全体の約4分の3となったそうです。
次に分析的頑健性とは、先行研究と同じデータに対して、異なる分析をした場合に、同じ結果が得られるかを指す概念です。これを検証した第二論文では、ランダムに選ばれた100論文それぞれに対して5人の独立した再分析者を割り当て、それぞれの再分析者が元論文の仮説・主張の検討に適切だと思う分析方法・ソフトウェアを選び、分析を実施しました。その結果、元論文と同じ結論に達したケースは全体の約74%となりました。ただし、元論文で報告されたのと同じ強さの効果が得られたと判断されたケースは約半数にとどまりました。
最後に、再現可能性とは、先行研究と検討された仮説が新しいデータを用いても支持されるかを指す概念です。これを検証した第三論文では、164の論文の274の仮説・主張を扱いました。元論文と同じ方法・マテリアルを用いた検討の結果、274のうち151の仮説・主張(55.1%)については元論文と同じ結論が得られました(心理学領域に限ると49%)。
総合すると、2009〜2018年に出版された社会科学領域の論文の再生可能性・分析の頑健性・再現可能性はいずれもおおよそ50〜70%の範囲に収まり、必ずしも知見の信頼性が十分に高いとは言えない状況が示されました。ただし、2008年に出版された心理学領域の論文の再現可能性を検討した論文(Open Science Collaboration, 2015)では、その再現可能性は36~39%と報告されており、この数字よりは高い値となっている点はポジティブ要素と言えるかもしれません。オープンサイエンスの重要性がより認識されるようになった昨今では、この値がさらに改善していくことが期待されます。(オープンサイエンスについては、こちらのコラム参照:https://jwu-psychology.jp/column/post-26.html)。
こうした取り組みを通じて、より信頼できる科学的知見を積み重ねていくことが重要でしょう。
