心理的アセスメントの授業風景 2026
前期の水曜日2限に開講している「心理的アセスメント」の授業風景をご紹介します。
この授業は,公認心理師資格を取得するために必要な科目のひとつです。
臨床心理学に基づく心理支援は,困りごとを抱えて専門機関を訪れた人の心を理解することや,その人が自分自身についての理解を深めることを目指しています。
心理検査は,そうした人々の精神状態や心的機能の水準を評価するための有効な方法のひとつです。
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ちなみに,この授業で取り上げたのは,知能検査でした。
皆さんご存じのIQという概念は,知能検査の開発が進む中で生まれました。
フランスの心理学者であるBinet, A. (1857-1911)は,学校で行われる一斉授業にはついていけない児童を見つけ出し,特別な教育に振り分けるための客観的な指標の開発・研究を行っていました。
彼は,精神科コロニーで知的発達症(いわゆる知的障害)児童の教育に携わっていた,Simon, T. (1873-1961)と協力して検査を作成しました。Simonはコロニーでの経験上,年少の子どもと知的発達症の子どもが似ている,ということに気づいていました。そこで,知的能力を測定するため年齢を基準にする(精神年齢),というアイデアが生まれました。
こうして,Binet・Simon式知能検査が誕生します。
この検査において,ある年齢の50-75%の児童が正答できる問題を,「その年齢の知能水準を測定できる問題」と定義しました。
例えば,10歳の児童が答えられる問題を10歳級の問題として,その問題に正答すれば,精神年齢10歳,という評価になるわけです。
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Binetの開発した知能検査は,Terman, L, M. (1877-1956)によってアメリカ合衆国で標準化されました。その際,精神年齢を生活年齢(実年齢)で割って100をかけることで,IQを算出する,という方法が採用されました。
つまり,Binet式の知能検査で,IQ=100の児童は,年齢相応の知能水準にある,ということになります。
では,IQ=200はどういう場合が考えられるでしょうか?
例えば,生活年齢5歳の児童が,10歳級の問題に正答した場合には,
10÷5×100=IQ200
となります。
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この検査に基づくと,IQ=200は,天才というより,とても早熟な児童,ということになりますね。
しかし,この精神年齢と生活年齢の比でIQを算出する方法は,子どもが対象なら問題ないかもしれませんが,成人を対象にするとうまくいかないことが予想されますね。
子どもと異なり,大人の場合,年をとればとるほど頭が良くなるとは言えないからです。
では,成人の知能はどうやって測定するか?
そのために開発されたのが,Wechsler式知能検査です。この検査は,第一次世界大戦をきっかけに開発されたArmyα,Armyβといった検査や,Binet式知能検査から設問を採用しています。
ただし,IQの算出方法は,精神年齢と生活年齢の比ではなく,年齢ごとに標準化を行い,同年齢集団のなかでどのくらいの位置にいるかを示すことで表しています。これを偏差IQと呼びます。
ちなみに,Wechsler式知能検査では,IQは160までしか算出されません。
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知能やIQという言葉を聞くと,固定的な印象を与えるかもしれません。しかし,何歳の時に,どの検査で測定したかによって,測定されている能力も,算出されるIQも異なる可能性があるということを,是非頭の片隅の置いておいてください。
なお,受講生の感想を紹介すると,
- 知能検査やIQの考え方について理解することができた。成人に使用する知能検査では、IQは平均が100となるように標準化されていて平均に対してどの程度かという指標となっていることが分かったが、世間ではこの数字が独り歩きしているように思う。よくネットの広告で「日本人の平均IQは105です!」とでてくるが、これはどのような計算過程で出てきた何の数字なのか気になった。
- これまで知能指数(IQ)は一つの数値で表されるものだと思っていたが、その背景にはさまざまな認知能力が関わっていることを知り、知能を多面的に捉えることの重要性を理解した。
- IQ200は大人ではほとんど出すことができないと知り、少し残念に思った。授業を聞いているうちに、実際にはどの程度のIQが現実的に到達可能な高い数値なのか気になった。
などなど,皆さん,自分なりの疑問・関心を持ちながら授業にのぞんでいることが伝わってきます。
