社会・集団・家族心理学Ⅱ ある日の授業風景
みなさんこんにちは。社会・集団・家族心理学Ⅱの授業をご紹介します。
家族は人間が生まれて初めて出会う集団です。この講義では、家族を理解する視点や、現代社会において家族が抱えやすい問題に焦点を当てながら支援法を学ぶことを通して、これからの生活をよりよいものにしていくために活かせることを目指しています。
この日のテーマは、家族を構造という視点からとらえる「構造派家族療法」でした。
毎回、最初に講義内容リスト【このセクションで学ぶこと】を示し、これから学ぶことのイメージを持っていただきます。次の写真ですね。
同時に、写真では私の背後に隠れて見えにくいですが、「今日のQuestion」を2つくらい提示しています。例えばこの日は、「家族の構造とはなんだろうか?」という非常に素朴なQuestionから始まりました。
おそらく多くの人がこのテーマを見たときに、なんとなく「家族?構造?何だろう❓」という「❓」をたくさん頭に浮かべるのではないでしょうか。素朴な問いはときに根源的な問いでもあります。改めて言葉にすることで、「こんな素朴な問いでもいいんだ」と思っていただき、あまり構えずに問いを発するきっかけにしてもらえればと思っています。
次の写真は、重要な考え方の一つである「世代間境界」についての説明をしている場面です。これは、とてもラフに表現すると、「親世代と子世代の間にある、ある程度の距離感」とでもいうものです。これがあまり密接すぎず、かといって離れすぎないくらいがちょうどいい、お互いに健康ですよ、という話をしています。
この話をすると、「家族の距離は密なほどよいと思っていたけどそうでもないのでしょうか」と訊かれることがあります。よい質問です。確かに仲が良いのは望ましいことなのですが、密接すぎるとストレスを感じることもあるということは、コロナ禍下で経験された方も多いと思います。
良好な関係のうちにも、お互いの世界がそれぞれに保証されていることが大切だということです。こんな風に「そうだったのか」「自分の思っていたのとは少し違った」という思いがけない体験や、「やっぱりそうか」と納得する体験、「私の場合はどうだろうか」と振り返ってみる機会を提供することを心掛けています。
こうした学びを踏まえて、講義の最後の時間には支援の事例を提示して考える時間を取っています。家族心理学は抽象的な用語が多いので、具体的な事例で考えることで理解しやすくなります。また、公認心理師科目であり、実践的な内容ですので、一人一人が自身の体験に照らし合わせ落とし込んで理解できることを大切にしています。それが将来支援者を目指す人には実践活動につながることになり、支援者を目指さない人にも、生活のどこかで役立ててもらえるといいなと考えています。
事例についてはグループディスカッションを行い、他の受講生の意見を聞く機会も設けています。肯定的な意見だけではなく、「こんなにうまくいくとは思えない」という疑問や、「デリケートなことなので支援には最新の注意が必要だと思った」という繊細な感覚も、受講者自身の体験として大切にしています。また学びをもとに支援法を独自に考えてもらう機会もあるのですが、斬新な視点やよく考えられた支援法もあって私自身とても刺激を受けます。受講生からも「自分にはない考えを聞けて視野が広がった」という感想が聞かれます。
さてこんな風に学びを進め、最初の「家族の構造とはなんだろうか?」というQuestionの答えを受講者が手にできたのでは?というところで【今日のまとめ】をして終了となります。
** 受講者の感想(抜粋)をいくつかご紹介します。
- クライエントが率直な思いを伝えられるように、セラピストは信頼関係を丁寧に築いていく必要があると思いました。
- 家族の形というものは本当に様々なものであると思いました。
- 家族だからといって距離が近ければ近いほど良いというわけではなく、それぞれの世界を持ちながら適度に交流していくことが大事なのだということを学びました。
- 将来教師を目指すものとしても、子どもにとって重要な存在である家族への理解が大切だと思いました。
- 将来パートナーを選ぶ際にも、大切なことを学べました。