臨床心理学概論 ある日の授業風景
こんにちは。臨床心理学概論の授業紹介をします。
臨床心理学は、カウンセリング等の対人支援のための実践的な心理学です。この授業は1年次向けであり、多くの学生にとって初めて出会う臨床心理学の授業となります。臨床心理学について、その成り立ちから、対人支援のための諸理論、そして心理職の実践の様子などを学び、臨床心理学の概要を理解することを目指します。
さて、この日は支援のための理論の一つである「認知論的・行動論的アプローチ」についての授業でした。
認知論・行動論的アプローチは、ものの見方や考え方、行動を変えることで、より健康に生きていくことを目指す方法です。例えば、失敗したときに「失敗するなんて、自分はダメな人間だ」と自分を責めるか、「誰でも失敗することはあるから仕方ない。次は気を付けよう」と考えるかで、気分は違ってくるというのは、多くの人が体験するところではないでしょうか。また、友人からのメールやLINEの返信が遅いと、いろいろ考えすぎて疲れることもあると思います。このアプローチはそんなときに、「相手に確かめてみる」「考え方を変えてみる」などの、自分でできる具体的な方法をカウンセラーと一緒に考えていきます。
私の授業ではいつも最初に、今回の授業で考えてほしい問いを提示します。実はこのアプローチは最初は「行動」に焦点を当てるところから始まりました。それが次第にものの見方を変えることの大切さにも目を向けるようになっていったのです。それはどうしてなのか?疑問を持ってみていきましょう、というのが今回の問いになっています。
創始者の顔写真も提示して、イメージしやすいよう心掛けています。心理療法はそれを開発した人たちのストーリーでもあります。創始者の顔が見えることで、格段に「ストーリー感」がアップして聞きやすくなると思います。
ところで認知的・行動論的アプローチでは、効果研究が盛んにおこなわれていて、科学的で実証的な心理療法とされています。理論的と言われる一方で、効果のある方法を集めて構成されているために実は理論的背景は1つではなく、3つの柱があります。いわば「アソート」なところがあるのですね。それを図で説明しています。
とはいえ、説明を聞いただけでは、なかなかイメージできないのが心理療法だと思います。そこでこの日は、実際に認知行動療法を実施している場面の動画を視聴しました。感想を、ディスカッションという形でシェアしました。自ら発言し、他の人の意見を聴くことで視野が広がります。
受講者の感想をいくつかご紹介しましょう。
- カウンセラーさんが寄り添っている感じが伝わってきた。少しクライエントと距離があるように感じた。
- 私もネガティブになることが多いので、自分が何をしていると楽しいのか、行動を振り返り日々楽しく過ごせればと思った。
- 一旦気になり始めると、そのことしか考えられなくなって悪循環に陥ってしまい、自分自身では抜け出すことは難しい。しかし、カウンセラーに話すことによって、良い方向へと変わっていけると感じた。
- 慣れれば自分でも実行できるよい方法だと思った。
- 以前から自分がやっていること(気持ちの切り替え方など)に近いものもいくつかあった。
いかがでしょうか。面接場面を想像したり、学んだことで自分を振り返ったり、気付きを今後に活かそうとしている姿勢が伝わってくると思います。「自分でできること」こそがこのアプローチが目指すところの一つでもあります。
感じていることを共有し、体験的な学びができたところで、授業は終了となります。