質問紙調査法Ⅱ ある日の授業風景

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心理学では、人々の感覚や感情、考えに代表されるような「心」を測定する方法を整えるとともに、その測定結果から何らかの知見を得るための様々な研究法も発展させてきました。その代表的なものの1つが質問紙調査です。心理学科の「質問紙調査法Ⅰ」「質問紙調査法Ⅱ」の授業では、こうした質問紙調査の方法論や調査によって得られたデータの分析方法を学んでいます。 

質問紙調査法Ⅱのある回では回帰分析regression analysisについて「類似性魅力仮説」を例に解説と実習を行いました(清水・荘島, 2017を参照)

まず類似性魅力仮説とは「人は一般的に、自分と似ている人に好意(魅力)を抱きやすい」という仮説のことです(Byrne & Nelson, 1965)。ここでこの仮説を検証するために、参加者25名にある特定の人物を紹介し、その人物にどれほど好意を抱いたかを10段階で報告してもらったとしましょう(好意度)。またこれとは別に、その人物と各参加者の間でどれだけ性格や好みなどが一致しているかを、やはり10段階で評価したとします(類似度)。つまり、25人の参加者それぞれが好意度類似度という2つのスコアを持っている状態です。

もし類似性魅力仮説が妥当であれば「類似度のスコアが高い(低い)参加者は、相対的に好意度のスコアも高い(低い)」という関係性が観察されるはずです。そして回帰分析とは簡単に言えば「一方のスコアが高くなるにしたがって、もう一方のスコアがどれだけ高くなるのか」を検討する方法です。具体的には、実際の観測データを元に回帰式(y = ax + b という一次方程式の形の式)を求めて、一方のスコアが1点上昇すると、もう一方のスコアが何点上昇するかを期待できるかを、統計的に求める方法ですxの係数aが求まればこれがわかります)。類似性魅力仮説の例を使うなら、例えば類似度スコアが5点の人と6点の人では、平均して好意度が何点変わるかといったことがわかるようになるわけです。 

こうした回帰分析やその発展版である重回帰分析は「線形モデル」と呼ばれる、心理学では非常にポピュラーで、学位論文(卒業論文など)でもよく用いられる統計的分析方法です。今回の授業では、こうした「線形モデル」の基礎である回帰分析について、解説したというわけです。心理学で統計的分析方法が使われると聞くと、なんだか難しそうだと身構えてしまうかもしれません。ただ心理学科の学部の授業では基礎から少しずつ教えていますし、実際に4年生は立派にこうした分析を扱えるようになっています。 

 

引用文献 

  • Byrne, D., & Nelson, D. (1965). Attraction as a linear function of proportion of positive reinforcements. Journal of Personality and Social Psychology, 1(6), 659–663. https://doi.org/10.1037/h0022073 

  • 清水 裕士・荘島 宏二郎 (2017). 心理学のための統計学3:社会心理学のための統計学 誠信書房