進化心理学 ある日の授業風景
進化心理学の授業を覗いてみましょう!
今日の進化心理学の授業では、私たちはヒトの心の特徴に迫ります。まず、私たちの心と行動は進化の過程で築かれてきたものであり、それが現代の私たちにも影響を与えていると考えます。授業では、進化の中でどのように心が形成され、どのように維持されてきたのかに焦点を当てています。
進化心理学は感情や認知などの心の機能がなぜ、どのように進化したのかを探求します。例えば、ヒトが社会的な動物である理由や、複雑な感情を持つようになった理由などを理解しようとします。
今回は「記憶」にフォーカスしました。私たちは「今ここ」を超えて目の前にないものを想像する能力を持っています。この「心的時間旅行」と呼ばれる能力によって、過去や未来を考えることができます。しかし、この能力はヒトだけでなく、他の動物にも見られるのでしょうか?
過去を振り返る時、私たちは覚えたものを思い出せないことや、リストの最初と最後の項目をよく覚えること(系列位置効果―心理学実験Iの紹介もご覧ください!)があります。これらの現象はサルやハトでも確認されています(Jitsumori, Wright, & Shyan, 1989; Roberts & Kraemer, 1981)。では、遠い過去のことはどれくらい覚えているのでしょうか?最近の研究では、チンパンジーが昔の仲間の顔写真を、知らないチンパンジーの顔よりも長く見ることが報告されました(Lewis et al., 2023)。でも、彼らがその時を懐かしむのかどうかはまだ謎です。
心的時間旅行には、過去を振り返るだけでなく、未来を予測し考える能力も含まれます。ヒト以外の動物も未来を予測し、それに備える行動をとることがあるようです。これに関する研究はさまざまな動物に焦点を当てて進んでおり、今後も新しい知見が授業で紹介されることでしょう。授業を通じて、ヒトの心の奥深さや他の動物との共通点を発見していく楽しみが待っています!
引用文献
- Jitsumori, M., Wright, A. A., & Shyan, M. R. (1989). Buildup and release from proactive interference in a rhesus monkey. Journal of Experimental Psychology: Animal Behavior Processes, 15(4), 329.
- Roberts, W. A., & Kraemer, P. J. (1981). Recognition memory for lists of visual stimuli in monkeys and humans. Animal Learning & Behavior, 9(4), 587-594.
- Lewis, L. S., Wessling, E. G., Kano, F., Stevens, J. M., Call, J., & Krupenye, C. (2023). Bonobos and chimpanzees remember familiar conspecifics for decades. Proceedings of the National Academy of Sciences, 120(52), e2304903120.