心理学的支援法Ⅰの風景:行動活性化
心理学的支援法Ⅰの、今回の授業テーマは、認知行動療法のアプローチのひとつである「行動活性化(Behavioral Activation)」でした。
これは、うつ状態の治療法として古くから用いられてきた、いわば「素朴」ながらも確かな効果を持つ方法です。近年、その有効性が再び科学的に実証され、現代でも広く臨床現場やメンタルヘルス支援に活用されています。
■ なぜ「行動」から変えるのか?
人は「落ち込んでいる」状態になると、普段ならしていた行動をしなくなりがちです。
すると、周囲から得られる「楽しさ」「達成感」「人とのつながり」といった正の強化が減少します。
その結果、気分がさらに落ち込み、行動もますます減っていく……。
このような負のスパイラルに陥ることがあります。
行動活性化では、このスパイラルを変化させるために、気分が沈んでいるときでもできそうな、小さな「行動」から始めることを重視します。
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■ 「やりたい・やれそう」を探す
授業では、受講生のみなさんにもこのアプローチに少しだけ取り組んでみてもらいました。
「この一週間で、自分が“やりたい・やれそう”と思える行動を考える」という行動実験ののワークです。
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■ 受講生のみなさんのプラン例
以下は授業中に出た行動プランの一部です(内容は一部修正しています)。
🧘♀️ 入浴後に部屋でストレッチをする
🍦 バイト帰りにコンビニでアイスを買う
🎧 駅からバスではなく、音楽を聴きながら歩く
💻 家や電車で簿記の動画を1本見る
📖 夕食後に英語のフレーズ集を5分だけ読む
🎁 姉妹でショッピングモールへ行き、いとこのクリスマスプレゼントを買う
🎬 「秒速5センチメートル(アニメ)」を夜ごはんを食べながら一人で観る
🍜 放課後に友達と〇〇駅でマーラータンを食べる
☕ バイト帰りに最寄り駅のカフェで母とカフェオレを飲む
🌞 「おはよう」「ごちそうさま」などのあいさつを、いつもより明るく言う
💤 日付が変わる前に寝る(スマホは部屋に持ち込まない)
🎵 「2025冬プレイリスト」を作る(レポートが終わった木曜に)
どれも、“やりたい・やれそう”が感じられる素敵なアイデアばかりです。
■ 実験は「やっても成功・やらなくても成功」
来週の授業では、それぞれの「行動実験」の結果を報告してもらいます。
ただし、この実験には「失敗」はありません。
やっても成功、やらなくても成功です。
「実験」の精神で取り組むので、自分の行動や気分の変化を“事実”として観察することを重視します。
今回の体験から、自分にとって「どんな行動なら自然にできそうか」「どんな工夫なら楽しく続けられそうか」を見つけてもらえたらと思います。
