知覚・認知心理学Ⅰ ある日の授業風景 

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知覚・認知心理学は公認心理師資格対応科目の一です。日本女子大学心理学科ではこの科目をⅠとⅡに分けており、Ⅰの方では視覚について講義をしています。視覚に関する心理学的側面のみならず、神経生理学的な側面についても解説しています。例えば高次脳機能障害に分類される視覚失認は、公認心理師資格試験や臨床心理士資格試験のみならず、公務員試験(心理職)においてもよく出されます。この授業では、そうした試験問題への対策も踏まえて講義が組み立てられています。

この日の授業では、視覚失認と並んでよく各種試験問題に出される感覚の基本について学びました。感覚において特に大事な概念は「閾」と「閾値」(※)です。閾とは、「何らかの境目」を意味します。そして心理学でいう閾値とは、この境目を超えて、私たちに何らかの感覚を生じさせるために必要な最小刺激量(見ている対象や聞いている対象の強さ)を意味します。最小刺激量は、実験により推定します。

心理学を学んだことがない人は、心理学に「実験」という言葉が出てくることにびっくりするかもしれません。心理学で実験を行うようになった目的の一つは、この閾値を正確に測ることにあります。というのも、閾値を測定する場合、何らかの測定装置のボタンを押せばすぐに答えが出るわけではないからです。人間を対象として閾値測定を行うと,心理的な変動(たとえば期待,動機づけ,注意など)やさまざまな生理学的な変動が生じ、計測するごとに結果が違ってきたりします。こうした変動をできるだけコントロールするために、心理物理学的手法と呼ばれる実験方法が開発されてきました。授業では、デモンストレーションにより、閾値を測定する実験を体験しました。

授業ではまた、こうした実験から発見された、感覚に関する次の3つの法則を学びました。

  • ウェーバーの法則
  • フェヒナーの法則
  • スティーブンスの法則

これらの法則は各種試験によく出されるために、本日の授業ではそれぞれについてわかりやすくまとめました。下のグラフは、刺激の強さに対して私たちの感覚の強さはどのように変化するかを示したもので、フェヒナーの法則と呼ばれています。ある物理量に対してどれほどの心理量が生み出されるかを示したこの法則は、感覚の心理学における最も重要な知見の一つだといえます。

※「閾」「閾値」の定義は、現代心理学辞典(子安・丹野・箱田監修、有斐閣)より