心理学研究法 ある日の授業風景(基礎心理学)アルチンボルドに挑戦2025

研究法アルチンボルド2025.jpg

この日の心理学研究法(基礎心理学)の授業では、まず前半に基礎心理学における倫理についてお話ししました。

   
人を対象に研究を行う心理学だからこそ、実験者が配慮しなければならない倫理的な注意点が数多く存在します。授業では、実際の例を交えながら、これらの倫理的な注意点について具体的に解説しました。

投影資料の図出展:心理学の実験倫理―「被験者」実験の現状と展望、河原 純一郎 (編集), 坂上 貴之 (編集)、勁草書房

    

後半は、テーマを変えて「顔パレイドリア」という現象をご紹介しました。

本来無意味な対象物を何らかの意味のある対象として捉えること、中でも特に「顔」として捉えることを顔パレイドリアと呼びます。私たちの認知の面白い働きの一つです。

その一例として、16世紀の画家ジュゼッペ・アルチンボルドの作品「ウェルトゥムヌスに扮するルドルフ2世(1590–91年)」を紹介しました。この絵は、果物や野菜、花などで構成されているのですが、どうしても「顔」として見えてしまう不思議な作品です。

その後のグループワークでは、「アルチンボルドに挑戦!」と題して、学生の皆さんに「顔に見える果物の盛り合わせ」をつくっていただきました。制限時間は5分。どのグループもアイディアを出し合いながら、楽しそうに取り組んでいました。

今年もたくさんの傑作(?)が誕生しましたので、作成者のこだわりポイントとともにご紹介します。

Aグループ:(こだわりポイント)横顔を表現。肌を緑に統一して、見ている側と目が合うようにしました。髪飾りをつけて可愛くしました!

  

Bグループ:(こだわりポイント)鼻を立体的に高くして、目、口、鼻、耳、眉、髪、輪郭などすべてのパーツを再現しました。そして余白を顔のほかのパーツと混同しにくい色の果物で埋めました!

   

Cグループ:(こだわりポイント)目の立体感と太眉を工夫しました!それから、なるべく余白が少なくなるようにしました!

  

Dグループ:(こだわりポイント)鼻を小さくしました(小鼻)。口はバナナのカーブを利用してにこやかに。髪の毛を素敵にしました!

   

Eグループ:(こだわりポイント)目と髪を立体的にしました。鼻のほりの深さを表現しました。そしてきれいな鼻毛、歯並びの良さにもこだわりました!

   

Fグループ:(こだわりポイント)ライムでほっぺを付けました。鼻を長め・高めにしました。実は眉毛がつながっています!

   

Gグループ:(こだわりポイント)リンゴの上のライムで眼帯を表現。葡萄はひげです。身体もつけました!

   

Hグループ:(こだわりポイント)目にカラコンを付けました。赤のリンゴで輪郭を作りました。イチゴでやさしい眉毛を表現しました!

    

Iグループ:(こだわりポイント)目に左右差をつけました。グリーンベースの顔にしました。髪の毛をもじゃもじゃにしました!

    

Jグループ:(こだわりポイント)三段重ねて目に立体感を出しました。大きいフルーツたちで髪を派手にしました。色彩に統一感を出しました!

  

Kグループ:(こだわりポイント)箱を横に使用!バナナの口に合わせて葡萄の困り眉を付けました。青りんごでほっぺを表現。小さな果物を組み合わせて鼻を作りました!

   

Lグループ:(こだわりポイント)目と髪に立体感を出しました!親しみやすいアンパンマンのような顔で美容意識の高いきゅうりパックをほっぺにしてみました!今、流行している多幸感メイクを施しました!

     

受講生の皆さんからのコメント(抜粋)です

<基礎心理学の実験における倫理>

  • 心理学を勉強しているということで今後様々な人に協力していただくことが増えると思うので、研究倫理をしっかり学び私も他の人の実験に進んで協力していきたいです。
       
  • 私たちが科学的な知見を得るうえで、実験参加者の方々の協力は欠かせませんが、その過程において倫理的な配慮がいかに重要であるかを改めて理解する機会となりました。
      
  • ヘルシンキ宣言という世界共通の倫理観に基づいて実験がされていることを知り、納得感がありました。実験で生じうるリスクの回避や実験参加者の人権尊重、自発参加などが含まれていることを学びました。
       
  • 途中でも辞退が可能であることを、実験を行う前に実験参加者に確実に伝えることが大切だと思いました。
       
  • 人を対象とする研究には、大きな責任が伴うことを改めて実感しました。今日その重要さに気づけたことで、これから真摯な姿勢で実験に取り組んでいきたいと感じました。

   

<アルチンボルドに挑戦>

  • グループで顔を作ったときには目から作り始めたので、顔と認識する際に目が重要なパーツとなっているのではないかと感じました。
      
  • 顔を作る前の果物がバラバラの状態ではただ果物だな…としか思いませんでしたが、顔にしようと並べてみると顔に見えてきて面白かったです。
       
  • いろいろな配置をするごとに新しい顔ができて、とても面白かったです。人間の脳について更に興味が湧きました。
      
  • 野菜の角度や位置などで人の顔に表情がついたように感じ、興味深かったです。
       
  • 果物自体の形だけではなく、全体を見た時の色の濃淡や立体感も関係していると思ったので奥が深い課題だと感じました。
      
  • 最初目のつもりでおいていた果物が、ほっぺとなる果物を置いた瞬間、目に見えなくなってしまったりして、とても不思議に思いつつ、とても面白かったです。
      
  • 普段はなかなか注目しないような日常の物や自然の要素に「顔としての役割」を与えることで、ものの見方が変わる感覚を得ることができました。