教育・学校心理学 ある日の授業風景
こんにちは。この小文では、公認心理師養成カリキュラムの科目の一つである教育・学校心理学の授業についてご紹介します。学校などの教育機関における心理職の役割や実践の様子について学ぶ講義形式の授業です。半期14回の講義全体を通して、スクールカウンセラーと先生方、そして保護者の方々が力を合わせて子どもたちの成長を見守るための「協働」「チーム学校」という考え方がベースになっています。そのうえで1回ごとに「不登校」など現在学校で起きている様々な現象について、取り上げていきます。
この日は、虐待事例の学校での対応について学びました。学校という子どもたちの日常生活の場には、様々な背景を持つ子どもたちが在籍し通学しています。そうしたことから時に、虐待事例に関わることもあるのです。
上の写真は、子どもたちの心身の安全を守ったり、関連機関との連携をする際の、進め方や留意点について話している場面です。センシティブな内容を伝えるときは、話している私もしんどい思いになることがあります。真剣な表情で聞いている受講者にも伝わるものがあると思いますが、一方で聞いていて辛くなりすぎないように配慮しつつ進めていきます。「子どもたちの安全安心のために、教員やスクールカウンセラーが、それぞれの専門性を活かしながら、学校全体で協力し合って対応すること」の大切さを伝えられるように言葉を重ねていきます。
また、学校と協力関係にある関連機関についての知識も大切です。上の写真のスライドの図は、要保護児童対策地域協議会という市町村の地域ネットワークの構成を示したものです。地域で見守りが必要な子どもたちを、学校、保育園・幼稚園、医療機関、保健機関、警察、市町村、児童相談所、弁護士会、民生児童委員など、多様な専門性をもつ機関が連携している様子を、円でつなげて表現しています。受講生からはよく、「地域にこんな連携があったなんて知らなかった」という感想が多く聞かれます。
ここで小休止を入れて「質問タイム」を取りました。受講生に思い思いにここまでの授業の内容を振り返ってもらい、その後私が教室内を歩き回って、わからないことや確認したいことがあれば、声を掛けて質問してもらいます。全体で共有した方が良いと思われる質問の場合は、改めて共有してから次のステップに進みます。
最後に、事例を提示し、各自が考える時間を取りました。ここまでの講義で得た知識が、実際にどのように現場で活かされているのかを学ぶことができます。さらに事例について様々な角度から考えたり、当事者の心情を想像したりすることは、心理的支援の実践につながる大切な学びです。「そんなこともあるのか」という発見があったり、「これでいいのだろうか」と疑問を感じたりすることは、事例の個別性を理解する上で貴重な体験です。きまった正解があるわけではないので、グループでの意見交換の時間を取り、さらに数名にインタビューをして教室内で共有し、多方面から検討できる機会を大切にしています。いつも思うことですが、皆さんそれぞれに良く考えているなあと感じました。
そしてリアクションペーパーに今日の振り返りを記入して授業は終了です。毎回、A6用紙の裏表いっぱいに振り返りを書いてくれる人たちが多いです。どんなふうに伝わったかが分かるので、リアクションペーパーに目を通すことはとても楽しみですし、授業の内容を考えるうえで参考にしています。質問が書かれていた場合は、次回に答えるようにしています。