感性・芸術心理学 ある日の授業風景

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みなさん、こんにちは!今日は「感性・芸術心理学」の授業について少しご紹介します。
※ちなみに、2025年度からは授業の名前が「感性・芸術情報心理学」に変更されますのでご注意ください!

この授業では、人間がどのようなものに美しさや魅力を感じるのか、その心理学的な法則やメカニズムを学びます。大抵は、講義を始める前に、クイズのような課題に取り組み、後の講義の中で種明かしやディスカッションをするというスタイルで進めます。この時の課題は、少しチャレンジングなもので、下の写真を観察してもらい、「二人の人物の顔を見て、どちらの方が魅力と感じるか」判断するというものでした。 ルッキズムが問題視されている現代において、なんてけしからん課題だ!と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、学生にはそう注意を促した上で直感で答えていただきましたので、ご理解いただければ幸いです。

上田彩子『「恋顔」になりたい! 愛される顔にはルールがある』(講談社、2011年)、106ページより

この課題を行った時のテーマは「性的二型性は魅力と関係あるのか?」というもので、上の平均顔は10年以上前に私が行った実験(手前味噌で申し訳ございません)で作成したものでした。左が男性に好まれやすい有名人のもの、右が女性に好まれやすい有名人のものとなっています(上田・小山、2011)。左の顔の主な印象は「女性的」や「親近感がある」で、右の顔の主な印象は「男性的」や「近寄りがたい」などであることがわかっています。ちなみに、ここで男性、女性という表現は、社会的に構築された役割ではなく、ただ単に生物学的な特徴を示しているものとしてお考えいただければと思います。

 

性的二型性とは、テストステロンやエストロゲンといった性ホルモンの作用により現れる生物学的な男性らしい特徴や女性らしい特徴を指します。進化的な観点からは、これらの特徴が配偶者として適しているサインとなると考えられています。

この観点からもう一度顔写真を観察してみるといかがでしょうか。左の顔の主な印象に「女性的」が挙げられている通り、どちらかと言えば左の顔の方が性的二型的な特徴を備えていると言えそうです。左の顔が男性に好まれやすい有名人の平均顔であることを考えると、この選好は、ある程度、進化的な見方で説明できてしまうものなのかもしれません。そうなると、おそらくは今の時代で同じような調査をしても、同じような結果が得られることが予想できそうです(残念ながら、まだ取り組んでいませんが)。

 

では、どちらかと言えば性的二型的な特徴を多く備えていない右の顔については、時代を経ても同じ選好があると予想できそうでしょうか?種明かしをすると、先ほどの課題の裏テーマは、これを学生と一緒に調べてみよう!というものでした。結果から言うと、111名が課題に取り組みましたが、5655と、選好は(ある意味で、綺麗に)二分されました。少なくとも、この結果から見ると、性的二型的な特徴を多く備えていない顔に関しては、どうやら時代を経ても同じ選好があるとは言えなさそうです。学生からは、「流行など、より文化的な影響を受けているのでは」など、非常に鋭い意見がありました。この辺りの仮説は、また今後、学生とともに調べてみたいと思います。

 

さて、いかがでしたでしょうか?

受講生のみなさんにこの授業の感想も聞いてみましたので(一部の抜粋です)、ぜひ参考にしてみてくださいね!

  • その場でデータを集めてその場でちょっとした実験をして結果がわかるということが面白かったです。
  • 私たちがどのように美しさを感じるのかや、漫画に隠された技法などを学ぶことが出来ました。日常生活に結びつけることができ、この現象がこれに繋がってるんだ!という発見が多くあって面白かったです。
  • 感性や芸術についての知覚について、基礎的なことを知れるだけでなく、化粧にまつわる美や漫画表現についてなど、多角的に感性について学ぶことができるのがとても面白いです!
  • 形式張った堅苦しい雰囲気ではなく、様々な内容が取り上げられる終始楽しい授業です。漫画をあまり読まない(詳しくない)民からすると少し大変な部分もありましたが、教室外に出ていくフィールドワークもあり面白かったです。特に後半回は、漫画やアニメ、イラスト好きな方におすすめの授業です! 

 

上田・小山 (2011). 既知女性の顔の魅力判断における性差の影響 顔学会誌, 11(1), 97-105.