発達心理学Ⅰ ある日の授業風景

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今日は「発達心理学Ⅰ」についてご紹介します。この授業も、公認心理師養成カリキュラムの科目の一つになります。そのため、受講者は公認心理師資格の取得を考えている人が多いですが、それと同じくらい、発達心理学がどのような研究分野なのか学んでみたい、とか、単に子どもが好きで興味がある、という理由で受講している学生さんもいます。

授業ではペア同士の話し合いや発言をところどころで求めます。今日の話し合いのテーマは「小学校を振り返ったとき、なにの学習が最も難しかったですか?」でした。

学生さんからは、「4年生ごろになると急に難しくなったよね」「分数が難しかった!」「概数とか少数も抽象的すぎて辛かった」「理科もエネルギーとか、見えないものをあると仮定するのは『???』って感じだった」という意見が多数。

その意見を受けて、まずはピアジェの認知発達理論の中の「形式的操作期」という段階に照らし合わせて解説しました。ピアジェは発達心理学の礎を築いた研究者であり、古典的ではありますが、現在の発達心理学はこのピアジェの理論を検証することで発展してきたともいえます。

次に、学習の成立に強く関係する認知の発達を紹介しました。例えばワーキングメモリの発達には大きな個人差があること、学習動機を高めるたり低めたりする要因はなにか、自分自身の持つ知識や状態、学習方略をより高い視点から把握するメタ認知の重要性といったことを、できるだけ身近な実例を挙げながら解説しました。

発達心理学に関しての基本的な知識を身に着けるだけでなく、その知識を自分の過去、現在、未来と照らし合わせながら学習を進めることで、受講生が自分事としての実感を持って生涯発達の過程を捉えるようになることを目指しています。

受講を終えた学生のみなさんの感想(抜粋)
  • 社会の問題や他者との関係、子育てやライフコースについて幅広く考えることができました。毎回の授業では初めて知ることや深く考えさせられることが多く、大学で学べて良かったと感じました。
  • 将来のキャリア育成についても、現実的にデータにもとづいて考えることができ、老後までの見通しを立てることができた。
  • 発達とは獲得の他に喪失や停滞など、マイナスなものも含めて生涯し続けるものだという定義が、私の中での「発達」の印象をガラリと変えたように思います。
  • 講義を通して、生きてきた時間の意味とは何だったのか、また今過ごす何気ない日々も発達段階であること、発達は止まらずにずっと続いていくことを学んだ。自分の人生を振り返る授業でもあったので、とても楽しかった。
  • 自分がこれまでどのような発達をしてきたかを知ることはとても興味深く、学びを得たことによって、その時私が感じた気持ちはこの時期はこういう思考になる傾向にあったからか、と答え合わせをすることもでき、自分についての理解がより深まったように感じた。
  • 人の一生には数えきれないほどの変化があって、人生とはとても厚みのあるものなのだということを感じた。発達心理学と聞くと、ついつい子どもの成長や良い子育てと考えてしまうが、ヒトが大人になっていき、場合によっては子育てをし、老いていくという一連の過程がこれほど豊かなものだと気づけたのはこの講義のおかげだと感じている。
  • 人間が生を受けて誕生し、発達しそして死を迎える過程の中で、今以上に質の高い「発達」を遂げるためにどうすればいいのか、これから模索していきたいと思った。