知覚・認知心理学Ⅱ ある日の授業風景
こんにちは、知覚・認知心理学Ⅱのある日の授業風景をご紹介します。
この日のテーマは「選択的注意」でした。
まず、両耳分離聴(dichotic listening)のデモを行いました。
両耳にそれぞれ異なる音声を流した状態で、片方のみ注意を集中させて、指示された方の耳から聴こえる音声を復唱します。
こちらにデモを貼っておきますので、このブログを読んでくださっているみなさまも、良かったらやってみてください(両耳のヘッドフォンかイヤフォンをお使いください)。片方の耳に注意を向けて、注意を向けた耳から聞こえる音声を復唱してみると…
(ナレーション 音読さん)
いかがでしょうか。注意を向けていなかった方の音声を細かいところまで聴き取るのはかなり難しかったのではないでしょうか?今度は注意を向ける耳を逆にして同じことをしてみると、「こんなことを言っていたのか!」と驚かれると思います。
このように私たちが同時に向けることのできる「注意」の総量(注意資源)には限りがあります。
集合住宅の水道のタンクにたとえると考えやすいかもしれません。集合住宅で各ご家庭が一斉に水道の蛇口を開けるとタンクの水が足りなくなって水圧が下がりますよね。同じように一度にいろいろなところに注意を向けると、注意資源が足りなくなります。
私たちの周りにはさまざまな情報があふれていますが、私たちの意識にそれらのすべてがのぼっているわけではありません。注意には自分にとって必要な情報や興味ある情報を選択し、その情報の理解に処理を集中するという意味があります。
続いて、Simons & Chabris(1999)による非注意盲(inattentional blindness)のデモのYouTube動画を観ました。
バスケットボールで遊んでいる人たちのうち、白い服を着ているチームが何回パスをしているかを数えるというデモです。それが終わると、種明かしの説明があります。
(出典:Daniel Simons, https://www.youtube.com/watch?v=vJG698U2Mvo&t=1s)
ネタバレになってしまうので、ここでは内緒にしますが、興味のある方はぜひ、上に貼ったオリジナルの動画を見てみてください。(白チームに注目するのをお忘れなく!)
その後注意の瞬き、視覚探索などのデモと解説、Anne Treisman先生のインタビューのご紹介、バインディング問題の概略説明などを行いました。
また、さらに学びたい方向けに参考書の紹介をしました。
知覚・認知心理学Ⅱの受講生のみなさんの感想(抜粋)です
- 普段、無意識に注意するものを選択していると知って驚きました。
- 注意の総量には限りがあるというのにとても納得しました。
- デモがたくさんあって、授業内容を理解しやすく楽しかったです。
- 両耳分離聴で一つのアナウンスに集中するともう一つのアナウンスが入ってこないのが興味深いなと感じました。
- 普段、見ているようで見えていないものは多いのだなと感じました。
- 視覚探索は、一年生の時に実験でレポートを書いたのでとても懐かしく感じました。
- 視覚探索のグラフの説明の時の先生のお話が面白かったです!
- 特徴統合はAnne Treismanさんが子どもとの遊びを通して見つけたというものだと知り、日常生活の些細なことの中で気づくことができるのがすごいなと思いました。
文献、参考書
- Cherry (1953) Some Experiments on the Recognition of Speech, with One and with Two Ears. The Journal of the Acoustical Society of America, Vol. 25, No. 5, pp. 975–979.
- Simons & Chabris (1999) Gorillas in our midst: sustained inattentional blindness for dynamic events. Perception, 28(9):1059-74.
- 基礎から学ぶ認知心理学-- 人間の認識の不思議、服部雅史 ,小島治幸 ,北神慎司 (著)、有斐閣 (2015/9/19)
- マジックにだまされるのはなぜか 「注意」の認知心理学、熊田孝恒(著)、化学同人(2012/1/24)